• 「3級損害保険鑑定人過去問題解説」

第5章、6章、第7章 平常時からの備え

第5章 罹災証明書の交付と第2次調査・再調査の実施
省略

第6章 被災者台帳の作成・利用
省略

第7章 平常時からの備え

1.デジタル技術の活用等による被害認定業務等の迅速化・効率化の検討
 大規模災害時においては、大量の被害認定調査の実施及び罹災証明書の
交付が想定されます。
 また、交付手続きにおいては、被災者が一斉に訪れることで窓口に行列が
できるなど、新型コロナウイルス感染症対策上の問題が生じることが
考えられます。
 そのため、デジタル技術を活用すること等による被害認定業務の迅速化
・効率化について、平常時から検討を実施しておくことが肝要です。

①防災基本計画における位置付けの確認
 防災基本計画において、市町村には、罹災証明書の交付に必要な業務の
実施体制の整備を行うことのほか、効率的な罹災証明書の交付のため、
当該業務を支援するシステムの活用の検討について定められています。

 また、都道府県には、被害認定調査担当者のための研修機会の拡充等に
よる調査の迅速化、被害認定調査や罹災証明書の交付に関する体制や
資機材が被災市町村のみでは不足する場合の支援、広域的な災害における
調査・判定方法の市町村間での調整などがそれぞれ定められています。

②デジタル技術の活用等による被害認定業務等の迅速化・効率化の検討
 デジタル技術の活用等による被害認定業務の迅速化・効率化について
検討します。

◇ マイナポータルを活用した電子申請やマイナンバーを活用した罹災証
明書の添付不要化、専用システムによる被災者台帳の作成など、被災者
の早期の生活再建に資するような検討を実施します。

a)マイナポータルの活用

b)個人番号の活用

c)専用システム等の導入
*参考:令和6年能登半島地震における被災者生活再建支援システムの
活用事例
・令和6年能登半島地震においては、令和5年7月に石川県で統一的に
導入した被災者生活再建支援システムを活用し、従来の紙の調査票による
被害認定調査や罹災証明書の発行と比較して、効率的に業務を進めること
ができた。
このシステムの主な機能は、
①専用の調査アプリを活用したタブレット端末による被害認定調査機能
②被災者台帳作成機能により各課横断的に支援対象者への支援状況等を
入力・把握
③調査結果の地図表示による進捗状況管理
④罹災証明発行システムにより、罹災証明の発行に必要な住基情報、家
屋情報、調査
結果の3情報を位置情報によって名寄せし、罹災証明書を発行
(調査実績:石川県内15市町で約8万軒の第1次調査をタブレット
により実施)
・また、全国で同一のシステムを導入している対口支援団体がリモート
で被害認定調査を行うなど、先進的な取り組みが行われた。

■被災者支援関連システムの機能について
被災者支援関連システムは、システムによってその保有する機能は異
なりますが、多くのシステムでは、被災者台帳機能を中心として、被害
認定調査の調査業務で利用する機能や罹災証明書交付業務に関する機能
を有しています。
現在導入されているシステムをみると、「住民基本台帳を元にした被災
者台帳作成・管理機能」をはじめ、各種業務の進捗や交付枚数等の管理
系機能の割合が比較的高く、次いで、GISによる可視化等の割合が高くな
っています。
それぞれの機能の概要は以下の通りですが、システムを導入する場合に
は、例えば調査票作成を省力化するためのタブレット端末による調査結
果の直接入力可能なシステムとする、今まで蓄積した調査ノウハウを活用
できる機能を有するシステムを導入する、などその目的に応じてどのよう
な機能が必要となるのかについて明確にしておくことが必要です。
*参考:クラウド型被災者支援システム(内閣府)
・ 内閣府では、被災者台帳の作成等の被災者支援手続のための基盤的な
システム(クラウド型被災者支援システム)を令和3年度から令和4年度
にかけて開発し、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)において
参加自治体を募り運用を開始した。
・ 当該システムでは、災害時における被災者台帳の作成管理、マイナン
バーカードを活用した罹災証明書等の電子申請やコンビニ交付、平時に
おける避難行動要支援者名簿や個別避難計画の作成管理機能等を搭載
している。
・ また、整備済みの専用システムとのデータ連携機能も搭載しており、既
存のシステムを活用しつつ、電子申請・コンビニ交付等の一部の機能を
活用する運用も可能となっている。

*参考:被災者支援関連システムの導入の効果(具体例)
(都道府県)
・ 実際に罹災した際に県内市町村で同一のシステムを構築していたこと
で、他県と比較しても罹災証明書の交付を早期に進めることができた。
(都道府県)
・ 大規模災害発生時の迅速な被災者支援と、県内での円滑な応援・受援
体制構築のため、県内全ての市町へ統一システムの導入を行った。
(市町村)
・ 被災時にタブレットを活用した調査を実施したことで、再調査時に被
災者と計算の仕方や具体的な被害の状況を確認しながら調査を行うこと
ができ、結果的に再々調査依頼をゼロとすることができた。
(市町村)
・ 新システムでは、これまでのノウハウ継承も目指して構築していること
から、被害認定調査や罹災証明書交付の業務の効率化をはかるとともに、
調査体制の構築や全体マネジメントついても、必要なデータを容易に活用
できるようにするなど、より効果的に実施できることを期待している。

■被災者支援関連システムの導入に関する留意点
被災者支援関連システムは、導入コストや維持管理コストがかかるため、
予算確保が導入の課題となります。
導入済みの団体では、
・平時利用可能なシステム等を活用する
・地方財政措置を活用する
・クラウド型システムとして維持管理コストを低減する
工夫を行いながら、予算確保を行っている事例があります。
また、都道府県が一括して導入している事例では、導入費用を都道府県と
市町で負担することで、市町の費用負担を減らすとともに、都道府県の負
担分についても各種補助金等を活用することで軽減している例があります。
その他、システム導入に関しては、各団体における業務プロセスの明確化
とそれによる必要なシステム機能の明確化が必要との指摘もみられました。
また、発災時や発災後に導入するのでは無く、都道府県や近隣市町村の状
況、庁内のDX化・防災対策等に関するシステム化の状況、さらにはシステ
ムの構築から運用開始までに要する期間などを考慮しながら、導入のタイ
ミングを検討することが必要です。
なお、システム導入は、システム担当部署が対応することも多いため、
被害認定調査や罹災証明書を交付する担当部署と、システム担当部署が
連携して取り組むことも重要となります。

■被災者支援関連システムの利用の円滑化のための取組
被災者支援関連システムは、導入しただけではうまく機能させることがで
きません。
そのため平時の研修を実施することが必要です。
先進的な導入自治体では、県が中心となって研修を実施している例が見られ
ました。
システムは操作研修を一定期間実施していないと発災時に適切に利用するこ
とが難しくなるため、都道府県と連携したり他市町村と連携するなど、負担
を極力軽減しながら定期的に訓練を行っていくことが必要です。

2.事前段階での調査計画の策定と体制の検討
災害が発生した際に住家被害認定調査及び罹災証明書の交付を円滑に進め
るために、調査体制等についてあらかじめ定めておきます。
①担当部署と庁内応援体制
 地域防災計画に住家被害認定業務及び罹災証明書の交付業務並びにそれら
の担当部署を位置づけます。
 地域防災計画等に基づき、担当部署、担当業務範囲(統括責任者、コー
ディネーター)を確定します(詳細は『第2章2.①被害認定調査の
体制の設定』(p.63)参照)。
◇ 被害認定は、各種支援措置と密接に結びつく重要な業務であることを
災害対策本部にも認識してもらい、必要なサポートを受けることも重要
です。
例:庁内他部局、消防部局との連携、他地方公共団体への応援要請、被災
者からの相談(被害認定関連以外を含む)への対応方針等の全てを、担当
部署だけで進めることはできません。
②災害時に必要な調査員の人員規模の算出
 本手引き等を参考に、地域防災計画で想定されている規模の災害が発生
した場合に必要な調査員の人員規模について、平時に算出しておきます。
◇ この結果をもとに、災害時に迅速に他市町村等へ応援を要請できるよう
にしておくことが望ましいです。

*参考:目標期間内に調査を完了するために必要な人数を算出した
例(愛知県岡崎市)
・ 岡崎市においては災害時(震災)において1ヶ月(休日を除き20日間)
以内に調査を終えるという目標がある。
・ 一次調査(外観調査)について、1班2人で1日につき40棟を調査できる
と仮定すると、市内およそ18万棟の建物の調査に、225班450人が必要と
試算されるが、実際に調査にあたるのは税務部職員が中心であり、発災
後すぐに確保できる人員は今のところ40班80人が限度である。
・ なお、試算の前提はあくまで最悪を想定したものであり、必要に応じ
調査期間を見直すことも考えている。

③被害認定調査の実務経験者の活用
 被害認定調査の実務経験者や税務課OB、調査員向け研修受講者を事前
にリストアップしておきます。
◇ 大規模災害等により、単独の市町村で被害認定を速やかに実施するこ
とが困難な場合には、地元の被害認定調査の実務経験者や税務課OBの
活用も重要です。
◇ このため税務課OBや研修受講者をリストアップしておくことが望ま
しいです。

3.受援体制の構築と事前の準備
特に大規模災害が発生した場合、被害認定調査や罹災証明書の交付を円滑
に行うためには他の団体からの応援職員の受入れが必須です。そのための
ネットワークづくりや受入のための体制整備を行います
①受援体制の構築
 災害時に、円滑に受援を行うためには、受援の判断基準や具体的な手続
きについて、「受援計画」等でまとめておくことが重要です。
 受援計画では、「庁内全体の受援担当者」「各業務担当課における受援
担当者」「応援職員等の受入れ環境の確保」「受援対象とする業務の選定」
「応援職員等の受入れに関する基本的な流れ」などを整理する必要が
あります。
◇ 内閣府において「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画
作成の手引き」を作成しており、これらの内容を参照することも一つの
方法です。
<市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き>
http://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/index.html

②必要な応援職員数、職種、希望する条件などの明確化
 本手引き等を参考として、地域防災計画で想定されている規模の災害
が発生した場合に必要な調査員や罹災証明書交付に必要な人員の人員
規模を想定し、応援職員がどの程度の規模で必要となるかについても
想定しておきます。
 あわせて、①で検討した応援職員に依頼する業務や役割を踏まえて
希望する職種・条件等について整理しておきます。

③応援職員向けの研修体制
 応援職員に対して、業務に必要な情報の共有を行うための方法をあらか
じめ定めておきます。
◇ 被害認定調査の場合、1日の業務の中で想定する情報共有ミーティ
ングなどを活用します。
 特に被害認定調査の場合で、調査経験等がない応援職員を受援した
場合、応援職員向けに調査の基本的な内容についての研修が必要とな
ります。この研修は応援職員の交代毎に必要となりますので、あらかじ
め研修の資料や研修の方法等について定めておく必要があります。

④資機材・宿泊場所等の確保
 資機材については、あらかじめ用意できる内容について検討し、用意が
難しい物は応援
職員の持参を原則とします。
 宿泊場所について、近年の災害では応援団体側が用意・手配することが基本
となっていますが、被災地では、宿舎の確保が非常に困難となりますので、
あらかじめ宿泊可能施設などについては、リストアップしておくと、応援
依頼もスムーズになります。

⑤協定締結団体のネットワークの確保
 大規模な災害が発生した場合、被害認定業務は短期間で非常に多くの人員
を必要とするため、他の地方公共団体からの応援がないと円滑に実施できない
可能性があります。このような場合に、他の地方公共団体からの応援を受ける
ことが重要となります。
◇ 過去の災害においても、他の地方公共団体から応援を受けている被災地方
公共団体が多数あります。
過去の災害では、建築士会や建築家協会、土地家屋調査士会、不動産鑑定士
協会などの関係団体からの応援を受けており、受援体制を構築する観点から、
こうした団体とあらかじめ協定を締結することが有効です

*参考:災害時における関係機関からの受援事例(常総市)
・ 常総市では、第2次調査について茨城土地家屋調査士会(平均10人/日、
延べ60人/日)及び茨城県建築士会(随時)が協力を実施した
*参考:市町村と土地家屋士調査士会協定事例(静岡県内市町村)
・ 協定では、土地家屋調査士会と市町が連携して被害認定調査にあたること、
罹災証明に関する住民からの相談対応補助を実施することを規定している。
経費については、人件費は負担せず、資機材の費用負担のみを市町負担とし、
研修会を年1回開催することを協定内に明記している。

4.応援体制の構築と事前の準備
応援要請を受けた場合に、迅速に応援職員を派遣し、また応援先でも適切な
支援を行うためには、応援団体側でも応援に向けた体制構築と事前準備を
行っておくことが重要となります。
①応援体制の構築
 他の地方公共団体から応援要請を受ける窓口や、被害認定調査・罹災証明
書交付に係る応援職員の募集・調整の担当部署や方法についてあらかじめ定
めておくと、応援要請を受けた場合の対応がスムーズになります。

*参考:過去の応援団体における応援体制構築例
(千葉県千葉市)
・ 応援先との調整は、先方のニーズを把握する観点から防災担当が行い、
その結果を基に人事担当が全庁的に応援職員の照会を行う体制としている。
・ 房総半島台風の場合、被害認定調査のために派遣する職員は固定資産税
に関する業務の経験者から募集した。
・ 派遣日数は遠方で長期派遣を希望されれば1週間を目安として職員を
派遣し、日帰りでいける場合には毎日職員を交代するようにしている。
(東京都杉並区)
・ 全職員の被害認定調査経験や罹災証明書交付経験、他自治体の応援経
験などを人事部で一括管理し、応援職員の派遣も人事部で主導している。

②資機材の事前準備
 応援時、自らが利用する資機材については持参するよう要請を受け
ることが多いため、あらかじめ持参する資機材については用意してお
きます。
 なお、宿泊場所については、応援団体が被災地近隣のホテル等を手配
します。

③派遣職員の管理
 派遣職員が交代する場合の引き継ぎについては、受援団体側で実施する
場合もありますが、受援団体の負荷を軽減する観点からは応援団
体側で実施することが望ましく、あら
かじめ引き継ぎ方法について定めておくことが重要です。
◇ 過去の大規模災害における応援団体では、交代時に口頭による引き継ぎ
で対応している団体が多くなっていますが、より正確に引き継ぐために、
引継書などの文書による引き継ぎを行うことが重要です。
◇ 受援団体からは、応援団体による引き継ぎや自主的な管理が負担の
軽減につながり、結果円滑な受援につながったという意見も多く見ら
れます。

5.資機材等の準備
発災後、円滑に調査を行えるよう、平時から資機材等を用意しておきます。
①災害特性に応じた資機材等の準備
 被害認定調査に必要な資機材を用意しておきます。調査を行う人員
規模を見積もっている場合は、当該人員数の分は用意しておきます。
②資機材等の管理
 準備しておいた資機材が、いざという時に使えるよう、適切に管理
します。
◇ 定期的に資機材を使用する等し、点検しておきます。
◇ その際、特にバッテリー等の経年劣化する資機材については状態を確認
します。

6.研修等
発災後、円滑に調査を実施するため、住家の被害認定調査や罹災証明書の
交付業務に
関する手順をマニュアルとして整理し、研修等によって職員に周知します。
(この項目で検討する事項)
①罹災証明書に関するマニュアル等の整備
②調査員向け研修
③コーディネーター向け研修
④訓練
⑤被災地方公共団体への応援による調査実務の習熟
⑥研修修了者の名簿への登録

①罹災証明書に関するマニュアル等の整備
 被害認定調査や罹災証明書の交付業務の手順をマニュアルに整理します。
◇ 罹災証明書の交付に関連した業務(住家の被害認定調査、及び交付業務
に係る各種業務(広報、会場設営等))について、対応体制、実施事項、
必要な資機材等を簡潔にまとめておきます。
*参考:市町村が作成したマニュアルの例(神奈川県横須賀市)
・ 罹災証明書交付に関する業務のうち、住家被害認定調査に関する内容に
フォーカスしており、調査業務のポイントが具体的に記載されている。
○調査体制
○調査に必要な人員規模の計算
○応援職員の手配(1週間程度の応援が望ましい旨等の留意点についても
記載)
○班編成の考え方
○調査時の持ち物
○調査員の1日のスケジュール
○写真の撮影方法(1枚目は調査票番号、2枚目は調査した家屋の確認や
「一見全壊」
判定の根拠のために家屋全景を撮影、3枚目以降は判定根拠となる被害箇所
を撮影)

②調査員向け研修
 被害認定調査から罹災証明書の交付に至るまでの業務内容を職員に周知
・徹底するため、
研修を行います。
◇ 実施に当たっては、ビデオ会議システムを活用し、各市町村に映像配信
を行うなど、より多くの市町村担当者の参加が可能となるように努めるこ
とが重要です。
◇ 都道府県が市町村を対象とした研修を行う場合は、内閣府の担当職員
又は独立行政法人都市再生機構の職員(内閣府との協定※に基づく。)を
説明者として派遣することも可能です。(「災害時の住家の被害認定業務
支援に関する内閣府と独立行政法人都市再生機構との協定について」
(令和2年6月19日付け事務連絡内閣府政策
統括官(防災担当)付参事官(被災者生活再建担当)通知))

コーディネーター向け研修
 調査員とは別にコーディネーター向けの研修を行います。
◇ 「調査員向け研修」では、主に現場に赴き調査等の実作業を行う職員を
対象に、各作業の実施手順や資機材の取扱い方、及び被害の判定方法を
研修しますが、「コーディネーター向け研修」では、被害認定調査から
罹災証明書の交付に至るまでの業務の全体像を俯瞰し、業務を管理する
観点から重要な点(調査の進捗管理、1日のス
ケジュール管理、調査員の安全管理等)に重きを置きます。

④訓練
 研修で得た知識の定着を図るため、訓練を行います。
*参考:システムを用いた訓練(東京都)
概要:東京都の総合防災訓練の中で、都独自の被災者生活再建支援シス
テムを活用し、住家被害の認定からり災証明書の交付まで、生活再建支援
の全体像がわかる訓練を実施。訓練では、区市町村の職員及び東京消防庁
等の協力を得て、住民が実際に住家被害認定調査等を体験できる形で
実施した。
実績:平成24年度東京都・目黒区合同総合防災訓練
平成25年度東京都・あきる野市合同総合防災訓練
平成26年度東京都・杉並区合同総合防災訓練

⑤被災地方公共団体への応援による調査実務の習熟
 被災地方公共団体へ応援職員を積極的に派遣し、実務経験を積みます。
◇ 被災した地方公共団体から応援を要請された際には、できる限り応じ
るようにします。
◇ また、同一都道府県内で大きな被害を受けた自治体がある場合には、
要請を待たずに応援の申し出をすることも考えられます。
◇ 調査実務の経験者がいる地方公共団体については、経験者と未経験者
を組み合わせる形で派遣すると良いと考えられます。

⑥研修修了者の名簿への登録
 災害発生時に調査体制を速やかに確立できるようにするため、育成した
調査員やコーディネーターの名簿を作成しておきます。
◇ 各市町村の研修終了者の人数を都道府県が把握しておくと、災害発生時
における応援職員数の調整に役立てることができます。
◇ 調査員やコーディネーターの計画的な育成のため、都道府県が市町村職
員等を対象とした研修を行い、研修終了者の名簿を作成しておくことも考
えられます。
◇ また、県において資格制度を設け、災害発生時に資格保有者を積極的に
活用することとしている事例もあります。なお、大規模災害発生時には、
多数の調査員が必要であり、資格を保有していない職員も、研修を実施し
た上で調査員として活用していくことが必要です。
*参考:資格制度の例
(兵庫県)
・ 県職員、市町職員等を災害時に即戦力の調査員として被害調査に従事
できる家屋被害認定士として養成し、被害調査の迅速化と統一化を担保
することを目的とした「兵庫県家屋被害認定士制度」を設立した。
1 趣旨
平成16年台風第23号災害や新潟県中越地震災害における住家の被害調査
において、調査手順が複雑で時間を要することや、隣接市町間で認定結
果に差が出る等の課題が顕著になった。
このため、今後発生する災害における被害調査の迅速化と統一化を担
保し、被災者支援制度の円滑な実施に資するため、十分な知識と技術
を備え即時に被害調査に従事できる「兵庫県家屋被害認定士」制度を
平成18年1月に創設し、同年2月から認定士の養成研修を実施している。
2 養成人数及び内訳(平成29年度末)
(1) 養成人数 1,885人
(2) 内訳
① 市町職員 1,646人 ② 県職員 116人 ③ 民間、関係団体 123人
3 制度概要
(1) 家屋被害認定士の役割
・ 災害時に即戦力の調査員として被害調査に従事
・ 被害調査に関する調査方法、判定方法等の被災者等への説明
・ 調査員となる他の職員等に対する必要な研修・訓練等の実施
(2) 家屋被害認定士の養成対象者
・ 市町職員、県職員、関係団体会員等
(3) 研修内容
・ 被害調査、被害認定と災害救助法及び被災者生活再建支援法
・ 被害認定基準と運用指針
・ 被害調査及び被害認定の業務フロー
・ 地震被害時及び浸水被害時における被害調査の方法と実習
・ 市町における調査員の受け入れ準備
(4) 被害調査に係る市町への支援
兵庫県及び市町相互間の災害時応援協定(平成18年11月1日締結)
による。

7.罹災証明書の交付会場の想定
会場を設営して罹災証明書を交付する場合には、交付会場に求められる
規模や条件を整理し、事前に候補を選定しておきます(第5章4.参照)。
(この項目で検討する事項)
①規模や条件
②資機材等の準備
③優先使用に関する協定
 交付会場の候補が選定できている場合には、災害発生時に使用できるよう
交付会場の候補場所の管理者と優先使用に関する協定を締結します。

8.広報
災害時の生活再建の混乱を軽減するため、罹災証明書の交付や被災者支援
施策について、平時から広く住民に周知します。
(この項目で検討する事項)
①罹災証明書等に関する広報
②地域住民に対する防災教育

①罹災証明書等に関する広報
 ホームページ、広報誌等の媒体を通じ、住民に対して罹災証明書等に関する
情報を周知します。


*参考:・政府広報オンライン(「防災・減災」お役立ち情報)
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/cu_bosai/index.html

②地域住民に対する防災教育
 地域の住民に対して、罹災証明書の申請、住宅再建等のプロセスについて、
防災教育の一環として、周知します。

第8章 都道府県の役割

1.平常時の取組
都道府県の役割として、被害認定調査担当者のための研修機会の拡充等に
よる調査の迅速化、被害認定調査や罹災証明書交付の体制・資機材が被災
市町村のみでは不足する場合の支援、複数市町村間における調査・判定方
法の調整があります。都道府県としてこれらの支援を円滑に行うための体
制構築や災害対応能力の向上について、平時から取り組んでおくことが
重要です。
(この項目で検討する事項)
【平常時における取組】
①研修会の開催
②市町村に対する応援体制の構築
③自治体間協定や民間団体との協定締結の推進・支援
①研修会の開催
 平常時における取組として、県職員、市町村職員双方を対象として、被害
認定調査から罹災証明書の交付に至るまでの業務に精通した人材の育成を
目的とした研修会の開催や研修終了者の名簿作成等に取り組みます。
 被害認定調査の調査員を対象とした研修の他、災害現場では被害認定調査
全体をコーディネートできる人材が不可欠となることから、コーディネー
ターの育成のための研修も実施することが望ましいです。
 また、研修会の開催以外にも、マニュアルの作成や、訓練等を実施するこ
とも考えられます。
参考:住家被害認定士の養成(和歌山県)
・ 和歌山県では、平成23年台風12号災害による大雨災害の経験を踏まえ、
兵庫県の協力を得ながら、住家被害認定業務について必要な知識と技術を備え
た職員を事前に養成することを目的として、平成24年度に「和歌山県住家被
害認定士制度」を創設した。
・ 本制度では、県・市町村職員、県内の民間建築士等を対象として、住家
被害認定士養成研修を実施し、研修修了者を「和歌山県被害認定士」と
して認証・登録するものである。
・ 育成目標を1,000名以上としており、職員数の1割程度が住家被害認定士
の研修を受講するよう、各市町村に依頼している。
・ 平成29年9月末時点で1,321名(市町村職員925人、県137、民間建築士2
59人)の養成実績がある。

*参考:コーディネーター研修の例(東京都)
・ 東京都では、区市町村職員を対象に、り災証明書発行業務に係る建物
被害認定調査から被災者台帳の利活用までをマネジメントできる中核的
職員の育成を目的として、「被災者生活再建支援業務マネジメント研修」
を実施した。
・ 日程:平成26年6月~平成27年2月
・ 内容:被災者生活再建支援に係る一連の各業務をマネジメントする
観点から以下の研修を7回に分けて実施。
第1回 プロジェクトマネジメントの全体像
第2回 建物被害認定調査
第3回 調査票のデジタルデータ化
第4回 り災証明書発行データベース構築及びり災証明書申請受付・発行
第5回 り災証明書発行マネジメント
第6回 被災者生活再建支援
特別回 WBS(Work Breakdown Structure)とりまとめ報告会

*参考:被災者生活再建支援システムを用いた訓練(東京都)
概要:東京都の総合防災訓練の中で、都独自の被災者生活再建支援シス
テムを活用し、住家被害の認定からり災証明書の交付まで、生活再建
支援の全体像がわかる訓練を実施。訓練では、区市町村の職員及び東京
消防庁等の協力を得て、住民が実際に住家被害認定調査等を体験できる
形で実施した。
実績:平成24年度東京都・目黒区合同総合防災訓練
平成25年度東京都・あきる野市合同総合防災訓練
平成26年度東京都・杉並区合同総合防災訓練

②市町村に対する応援体制の構築
 発災時の体制構築をスムーズに行う観点から、平常時から市町村が
被災した場合の応援体制をどのように構築し、市町村支援をどのよう
なスキームで実施するかを決定し、市町村に周知します。
◇ 庁内において市町村支援をどのような体制で実施するかを明確にす
るとともに、研修等を通じて、市町村に対し都道府県の支援枠組みを
明確にしておくことも有効です。

*参考:被災市町村に対する住家被害認定係る支援スキーム構築の
例(和歌山県)
・ 和歌山県では、平成23年台風12号災害による大雨災害の経験を踏ま
え、住家被害認定調査の体制構築や班編成の方針について時系列でスキ
ームを定め、研修会等を通じて周知している。
・ 具体的な枠組としては、事前に市町村割当を定められた住家被害認定
の知見を有する職員からなる「住家被害認定士リーダー」を、被災市町
村からの要請に基づき派遣する。
・ 住家被害認定士リーダーは、被災市町村の統括職員と連携し、全体計
画の作成、県災害対策本部との連携による外部応援受入調整、調査班か
らの問い合わせ対応、調査全体の進行管理を行う。
<住家被害認定に係る被災市町村に対する支援スキーム

出典:和歌山県資料

③自治体間協定や民間団体との協定締結の推進・支援
 大規模災害発生時、被害認定調査は短期間で非常に多くの人員を必要
とすることから、他の地方公共団体や民間団体からの応援を受けること
が必要になります。
 このため、平時の取組として、自治体間協定・民間協定を推進すると
ともに、市町村の協定締結の支援を行います。

*参考:都道府県と行政書士会との協定の例
(新潟県、新潟県行政書士会)
・ 被災者が市町村等へ提出する書類の作成を行政書士が支援する。
・ 協定に基づいた行政書士派遣について、必要な経費を県行政書士会
が負う。
・ 協定に基づいた業務については無償とし、被災者は負担しない。
・ 派遣要請に基づき、県行政書士会職員が行った業務の中で負傷等し
た場合、県行政書士会が補償する。
・ 県行政書士会に依頼できる業務内容を、行政書士法第1条の2及び
第1条の3の業務、被災者支援相談センターの開設、及びその他県が
必要と認める業務とする。
・ 協議により、協定内容の全部又は一部の変更、解除ができる。

2.災害時の取組
防災基本計画では、都道府県の役割として、被災市町村の体制・資機
材のみでは不足すると見込まれる場合に、当該市町村に対し必要な支援
を行うことが掲げられています。
過去の大規模災害では、災害発生から1ヶ月を目処に調査を行い、初回
の罹災証明書交付が行われていることを踏まえ、被災市町村の被害認定
調査等の進捗状況を確認し、必要に応じて応援職員の調整等を行うこと
が望まれます。
また、都道府県の災害対応能力向上の観点からも、災害対応経験を有す
る都道府県と情報交換の機会を持つことや、比較的規模の小さな災害で
あっても積極的に人員を派遣し市町村支援を行うことは、市町村支援に
係るノウハウの蓄積を蓄積するうえで重要な取組と言えます。
(この項目で検討する事項)
【事後の対応】
①市町村向けの説明会の開催
②市町村からの相談対応
③応援職員調整
④資機材調達
⑤被害認定調査のサポート
①市町村向けの説明会の開催
 災害発生後速やかに、被災市町村の迅速な対応を促すとともに、同一
災害における被災市町村の間で、調査方法等が大きく異ならないよう、
都道府県が主体となり説明会を開催し、必要に応じて市町村間の調整を
図ります。
②市町村からの相談対応
 市町村から、被害認定調査の実施方法等に関する相談があれば
対応します。
③応援職員調整
 被災市町村から依頼があった場合、都道府県下の市町村との連絡調整
や、総務省の「応急対策職員派遣制度」を活用するなどにより、他都道
府県への依頼等を行い、必要な人員を確保します。
 また、必要に応じて応援協力等に関する協定を締結している民間団体
等に対し、被災市町村への人員派遣を依頼します
④資機材調達
 被災市町村から要請があった場合、また、都道府県が必要と判断した
場合、必要な資機材を調達します
(必要な資機材の詳細は『第2章3.★資機材等の調達』(p.71)参照)。
⑤被害認定調査のサポート
 被害認定調査の実施にあたり、必要に応じて市町村をサポートします。
過去の県内災害における対応事例等について情報提供するほか、市町村
の状況によっては、県が主導して調査を実施することや、コーディネー
ターを担うなどの支援が求められます。
 非木造住宅の固定資産税家屋評価を都道府県が分担している場合、
都道府県にて非木造住宅の被害認定調査を行うことも考えられます。

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